書き散らし

男子女学生

山陽道中膝栗毛

旅行記なるものを書いていこうと思います。

 

2年前の1月の終わり、滑り止めの私立高校受験を間近に控えた私と友人N(仮(イケメン))はNの部屋で頭を抱えていた。別に滑り止めで受けるはずの学校に合格できないかもと心配になっているわけではなかった。

 

私とNは小学校に上がる前からまぁ友人というか知り合いというかなんかそんなよく分からない関係であったのだが、小学校に上がってからはすっかり俺お前の関係になっていたんよ。いわゆる幼なじみとかいうやつですね。そんなNと私の志望校は違っていた。高校に上がるとおそらく遊べる機会が減るだろうから、中学生であるうちに何か記念になるような事をしようじゃないかということで、どこか遠くに旅行しようという話が出たのは12月の頭の頃であった。

 

行き先を決めるまでは順調だった。本当に順調だった。だがしかし。私たちの出せる予算4万円では行くことは出来ても帰るときは歩くことになるというとんでもないことになっていたのだ。そんな私とNが目指した行き先というのはそう、修羅の国福岡の首都博多であった。博多に行って何か目的があるかと言われると何もないのだが、お互いに本州から脱出した事がなかったので九州という地はどんなところかと気になっていたので目的地が福岡になった。

 

しかし、その計画を両親は許してくれても私とNの財布は許さなかった。予算は4万円が限度。どう頑張っても正攻法で福岡に行って帰ってくるには不可能であった。そして、そうこう悩んでいるうちに2018年は終わりを告げ2019年が始まった。年を越すとすぐに受験シーズンに突入である。2月の頭に私立入試、本命の公立入試は3月の頭、そしてすぐに卒業式で3年間過ごした学舎とおさらばである。私とNが定めた本州脱出目標は3月の終わりである。これが4月になるとダメなんだ。私とNには中学生という身分であるうちにどうにかして本州を脱出するという固い決意があったからだ。

 

もし、3月中に本州を脱出できないのであれば私とNは九州行きを諦め予算の4万円で豪遊するつもりでいるのだ。

 

話を冒頭のNの部屋に居るところに戻そう。私は、前からあった4万円以内で九州にいける方法があったのだが、なかなか言い出せずにいた。私は意を決してその方法をNに伝えることにした。それは青春18きっぷという1万円ちょっとで5日間JR全線乗り放題という切符の存在である。詳しくは各々で調べていただきたい。

一見するとその切符はまるで夢のような切符に見えるだろうがこの切符にはとんでもない落とし穴があるのである。それは簡単にいうと、新幹線や特急電車に乗ることができないのだ。これはかなりキツいことである。

 

私はNにダメ元でこの事を伝えるとNは案外乗り気であった。それなら話は早い。さっそく私とNは計画を立てはじめた。朝一番の特急に乗り福井に行き。そこから関西、広島、経由し福岡に至るという計画をたてた。無論、移動は福井から全て鈍行である。旅行日程は3泊4日で3日目の午後には博多について博多の町を散策できるような計画が立った。宿泊先に関しては、たくさんのサイトを見比べてネット割引を使い一泊あたり3000円以下で宿泊先を確保することに成功した。

すべての計画が立った。私とNは受験勉強そっちのけで必死に旅行の計画を立てた。お互いに滑り止めに合格してかなり気が抜けていたのである。がしかし私の腕は折れていた。

私立入試の翌日に私は自転車で盛大にこけて腕を骨折した。幸い若木骨折とよばれる比較的軽度な骨折だったためすこし腕が痛いだけで済み、回復も早かったので旅行に支障は出なかった。よかった。本当によかった。

計画も立ち宿泊先も確保することができたので残すはお互いに公立受験に向けて勉強をはじめたがこの時点で受験1週間前を切っていたのは私とN以外知らない。

 

そして受験があり卒業式があり合格発表があった。私もNもお互い合格しており安堵した。これですべての準備が整ったのである。

 

 

そしていよいよ旅行3日前になった2019年3月20日再びNの部屋にて、妙に小綺麗なNの部屋の絨毯の上でNは私にあることを言った。その一言が私を震撼させた。切符を買っていない。そうだ。肝心な切符がないと私とNは本州はおろか石川さえ出ることができないのだ。

翌日急いでNと駅に行き必要な切符を買い求めた。あらためて、ここではじめてすべての準備が整ったのである。